6月の読書

6月から始めた「読書メーター」には、「まとめ」という機能があり、先月とか先週とかに読んだ本を一覧にすることができるのです。
それにしても、6月はかなりたくさん読みました。
24冊で6977ページだそうです(再読本を2冊含めて)。
僕のこれまでの読書歴の中でも、これだけ読んだのは、初めてかもしれません。
これに匹敵するのは、浪人してた年の冬休みに(笑)、1週間で「幻魔大戦」20巻を一気読みした時くらいかな。

といっても、特に気合い入れて読書しようと意識したわけでもないんですよ。
それだけ、読みたい新刊がたくさん出たということですかね。
新しい「お気に入りの作家」を見つけるために、新規開拓もしましたしね。

もともと読むのは早い方ですし、通勤電車の中(駅での待ち合わせのふくむ)で往復読めば、早ければ1日1冊、おそくても2日で、普通の本なら読めてしまいます。
面白い本なら、帰宅後ちょっと読書タイムを取って、1冊読み切ってしまうということもありますし。

というわけで、以下は、「読書メーター」を使って作った今月読んだ本の一覧です。

2009年6月の読書メーター
読んだ本の数:24冊
読んだページ数:6977ページ

■1Q84 BOOK 1
読了日:06月01日 著者:村上春樹

■1Q84 BOOK 2
読了日:06月02日 著者:村上春樹

■クジラの彼
読了日:06月04日 著者:有川 浩

■L16 (1)
読了日:06月05日 著者:東屋 めめ

■うごかし屋 2
読了日:06月09日 著者:芳崎 せいむ

■今ここにいるぼくらは
読了日:06月11日 著者:川端 裕人

■遠いうねり グイン・サーガ 127
読了日:06月12日 著者:栗本 薫

■汽車旅放浪記
読了日:06月13日 著者:関川 夏央

■モノレールねこ
読了日:06月14日 著者:加納 朋子

■邪魅の雫 上 分冊文庫版
読了日:06月17日 著者:京極 夏彦

■邪魅の雫 中 分冊文庫版
読了日:06月18日 著者:京極 夏彦

■邪魅の雫 下 分冊文庫版
読了日:06月19日 著者:京極 夏彦

■なんて素敵にジャパネスク 人妻編 8
読了日:06月20日 著者:山内 直実,氷室 冴子

■さよなら妖精
読了日:06月21日 著者:米澤 穂信

■氷菓
読了日:06月22日 著者:米澤 穂信

■愚者のエンドロール
読了日:06月22日 著者:米澤 穂信

■春期限定いちごタルト事件
読了日:06月24日 著者:米澤 穂信

■夏期限定トロピカルパフェ事件
読了日:06月25日 著者:米澤 穂信

■秋期限定栗きんとん事件 上
読了日:06月26日 著者:米澤 穂信

■秋期限定栗きんとん事件 下
読了日:06月26日 著者:米澤 穂信

■六月の桜―伊集院大介のレクイエム
読了日:06月27日 著者:栗本 薫

■タイム・リープ―あしたはきのう (上) ※再読
読了日:06月29日 著者:高畑 京一郎

■タイム・リープ―あしたはきのう (下) ※再読
読了日:06月29日 著者:高畑 京一郎

■PLUTO 8
読了日:06月30日 著者:浦沢 直樹

▼読書メーター
http://book.akahoshitakuya.com/

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「邪魅の雫」

4062763729分冊文庫版 邪魅の雫〈上〉 (講談社文庫)
京極 夏彦
講談社 2009-06-12

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文庫分冊版で購入しました。
1冊にまとまっている文庫版も同時発売だったのですが、僕は通勤時の電車の中で読むことが多いので、京極堂シリーズは、分冊版でそろえているのです。

さて、ミステリーであると同時に、京極堂の語る蘊蓄が面白さの一つである京極堂シリーズですが、今回は、あまりその方面の話はありませんでした。
その一方で、ミステリーとしての完成度は、非常に高いのではないでしょうか。ただし、僕は、ミステリーマニアではないので、「ミステリー」の定義をどう捉えるかで意見が別れる所があるかもしれませんが…。

今回の話を一言で表すと、「人は世界をどう認識するか」についての話といえるでしょう。さきほど蘊蓄はあまり語られないと書きましたが、それでも、文芸に対する評論について、犯罪を社会がどう裁くかについて、歴史学と民俗学の違いなど、ある程度語られていることはあります。ただし、僕は、これらは「認識」が人により、また方法により異なる結果をもたらすという共通点を持つものとしてとりあげられているのだと思います。
そして、「認識の違い=世界の違い」が、事件を引き起すものであり、解決を難しくしていたものであるという、キーポイントになっているのです。

「真実は認識によって変わる」というテーマをあつかった小説といえば、一番世に知られているのは、芥川龍之介の「薮の中」でしょう。僕は「認識論」も芥川も好きなのですが、あの作品だけは好きではないのです。なぜなら、あの作品では認識だけでは変わりようのない事象までもが、語り手によって変わってしまっているからです。
それに比して、この小説では、4つの「異なる物語」を成立させただけでなく、その4つが複雑に絡み合って「一つの現実」として成立している様を見事に描いています。

上巻を読んでいる段階では、複数の語り手によって語られている事象が、なんとなく相関関係があるのではないか、立場を変えて見た同じ事象なのではないかということを感じさせるにとまどっています。僕はやりませんでしたが、ミステリーマニアの人なら、あそこでタイムテーブルを書いて、相関関係を実証したくなるんじゃないかな…と思ったくらいです。
しかし、もちろん、話はそう簡単にはいかないわけで、中巻では、事件の様相が混沌としてきます。そして、下巻に至り、それが一つの現実として再統合されいく様は、見事としか言いようがありません。しかも、その中で、ここまでに複雑に張り巡らされた伏線が、事件そのものに関わるものから、解決する側の動きまで含めて、次々と明かされていくのですから尚更です。

思えば、京極堂シリーズの第1巻「うぶめの夏」も認識論を使った物語でした。さらにパワーアップした認識論の物語は、シリーズの中でも重要な位置を占める一作になるに違いありません。

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「エヴァンゲリヲン 新劇場版:破」

「エヴァンゲリヲン 新劇場版:破」を見てきました。

ちなみに「序」の感想はこちら

僕は、あまりネタバレを気にせずに記事を書く方ですが、
今回の映画については、パンフレットにも封印がされているくらいだし、新しい展開を楽しみにされている方も多いでしょうから、話の内容そのものには、触れずにおこうと思います。
それに、今回変えた部分の評価は、残りのあと2作を見ないとできないという面もありますし。
というわけで、印象論が中心です。
とはいっても、その「方向性」ということが、内容云々より重要かもしれませんが…


さて、今回の映画を見て思ったことが二つ。
登場人物の雰囲気がやけに明るいなぁ、ということ。
それと、「謎」の要素をずいぶんと削ったなぁということです。

登場人物の雰囲気が明るいというのは、エピソード的にラブコメっぽい部分が追加されているとか、アスカが妙に素直であるとか、綾波の表情が豊かであるとか、ゲンドウが微妙にいい人っぽくなっているとか、色々あります。シンジが妙にポジティブだという面もあるかな。
「air/まごころを君に」は、ちょっとダークサイドが表に出すぎで、そんなに好きではないのは確かですが、ここまで毒気を抜かれてしまうと、ちょっとエヴァっぽくないなぁとは感じてしまいます。
もっとも、それを補ってあまりあるような大きな「棘」が一本、ぐさりときますので、それでお釣りが来るといえば、来るかもしれません。
それに、テレビ版の16話や20話のような中身は、補完計画発動時にとっておいた方がよいかなぁとは以前から感じていたので(どこかにそれを書いたかどうかは覚えてません)、そこでしっかり描きこんでもらえれば、文句はありません。
それでも、アスカのエピソードは、もう少し確保して欲しかったです。結果として、今回のような描き方になるにしても。ちょっとアスカとシンジの関係性が薄いんですよね。

「謎」の部分がずいぶん減ったなぁと思うのは、前回も「リリス」がネルフでは既知の情報になっているという話を書きましたが、今回でいえば、加持の動きを省略(?)する方向に動いてましたね。ネルフとゼーレの確執、エヴァを戦力として見た場合の国同士のかけひきなんていう要素は、描かれていましたので、こちらに関してはあまりとまどいはありませんでした。
エヴァに関しても、少なくとも2号機に関しては、汎用兵器っぽく描かれてました。そして、暴走についても、ある程度人間がコントロールできるものとして扱われている感じです。それが伏線になっているせいで、ゼルエル(劇中では第10使徒)との戦いの時の初号機の暴走も、TV版のような神秘性がなく、衝撃度も薄かったように思います。エヴァや使徒の扱いも、補完計画をどう描写するのかに関わってくるので、そこにたどり着いてみないと、何とも言えないところはあるのですが…。

いずれにしろ、「Q」の公開が待ち遠しいことは確かです。
さすがに、2年はかからないで欲しいのですが…(笑)

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「PLUTO」8巻

4091825249PLUTO 8 (ビッグコミックス)
浦沢 直樹
小学館 2009-06-30

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1巻を読んだ時から、この漫画は傑作になると確信していました。
そして、その確信が間違っていなかったことを、証明してくれる最終巻でした。

中盤、やや「謎解き」に傾きがちで、個人的には不満な部分もありました。
僕は、登場人物の感情が、ストレートに描写されている方が好みなので、「こいつは何に気づいたんだろう」「何に驚いたんだろう」というのが、ベールに包まれているのは、ストレスがたまるんです(笑)
「20世紀少年」や「MONSTER」も、嫌いではないのですが、ラストの方では「謎を明かす」というサプライズの方へストーリーの流れが行ってしまい、自分が物語からくみ取りたいことが、印象的に残るラストにならなかったことに、少しひっかかりを持っていました。

もちろん、「プルートゥ」の最終巻も、色々な謎に決着がつく仕掛けが用意されているのですが、単に謎を開示して終わりということではなく、一つの大きなテーマが掲げられます。
そして、その大きなテーマが、この物語の中で語られた様々な要素を一つに結びつけ、それらをより印象的なものとして浮かび上がらせてくれたように思うのです。
まぁ、ほとんどゲジヒトのお手柄なのを、おいしいところだけアトムがさらっていった感はありますが、でもゲジヒトだけではなく、エプシロン、モンブラン、ノース2号、ブラント、ヘラクレス、そしてサハドの想いまでも抱え込んでエンディングを飾ることのできる器が、アトムには備わっていることは認めざるをえません。

アトムは世界最高のロボットです。人工知能の優秀さ、戦闘能力の高さ、人間と同じような表情や身のこなし…。しかし、物語のラストでアトムが使った最高の武器、それは「心」でした。
アトムの中には、憎しみが宿っていました。それこそ、世界を滅ぼしてしまいかねないほどの。そのマイナスの感情を制御し、「生きる」「世界を存続させる」というプラス方向へのエネルギーに変えることができたのが、何によってなのか、その正体については、詳しいことは描かれていません。
ただ、それが「心」と呼ばれるものであることは、十分に伝わってきたように思うのです。

「心」の正体が描かれなかったことについては、賛否両論あるかもしれません。
実際に、我々に憎しみをなくす力があるのかどうか、わかりません。アトムには、それがあったというのは、所詮、きれい事に過ぎないのかもしれません。
でも、このブログでも何度か書いたことがあるかもしれませんが、僕はフィクションは「かくあるべし」というきれい事を訴えるものであってよいと思っています。それが、人に伝わる力を持っているのであれば。
人間が持ち得なかった「心」をロボットが持っているというのは皮肉な話ですが、同じような構図は「ラピュタ」でも見られました。人間自身よりも、人間の作り出したものの方が素晴らしい…。でも、僕はそこに皮肉としてのマイナス要素よりも、人間は意志の力で、より理想的なものを作り出すことができるかもしれないのだ、というプラス思考を感じています。

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「秋期限定栗きんとん事件」

4488451055秋期限定栗きんとん事件〈上〉 (創元推理文庫)
米澤 穂信
東京創元社 2009-02

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4488451063秋期限定栗きんとん事件 下 (創元推理文庫)
米澤 穂信
東京創元社 2009-03-05

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これまで小鳩くんの一人称だけで進められてきた小市民シリーズですが、この本では新たな語り手が登場します。なんと、小佐内さんに交際を申し込んだ、勇気ある下級生、瓜野くんです。
小鳩くんと小佐内さんが別れてしまった(という表現が不適切であれば、互恵関係を解消してしまった)ので、小佐内さんの行動をフォローする語り手が必要なのはもちろんなのですが、これがよもや叙述トリックの下地になっていようとは……

一人称での語りというのは、本当はその人が主観でとらえていることを、読者が客観的な事実だと捉えてしまう危険性があるわけですが、ここでいう叙述トリックというのは、そういう思い込みを利用して、最後にどんでん返しをくらわせる方法を指しています。
今回の事件は、これまでのものよりさらにスケールが大きく、2年生の秋から3年生の秋にかけて、約1年間が描かれています。その中で、小佐内さんと小鳩くんの張り巡らせた計略というのが、実に巧妙で、特にミステリーのトリックに明るいわけでもない僕などは、ただ感心するしかありません。

さて、この本を読み始めて最初に感じたのは、小鳩くんのセリフがずいぶんと長いな、ということです。
よくよく考えてみると、推理を進めていくことにあまり躊躇を感じていないんですね。かといって「小市民」という看板を下ろしたわけでもない。
これは、自分が推理を進めることと、小市民的に日々を送ることのバランスが、取れてきたということじゃないかなぁと思います。
「春期限定」などで触れられていた、小中学生時代の小鳩くんの所行を考えるに、彼が周囲から受けた反感の多くは、彼が推理を行うことではなく、それをひけらかしていたことに原因があったのではないでしょうか。
彼の成長にともなって自意識過剰が落ちつき、周囲とのバランスが取れるようになった結果、推理自体を行うことに罪悪感がなくなったということでしょう。
春期→夏期→秋期という流れの中で、その変化が意識的に語られたのだということを示す表現が、小鳩くんのモノローグの中にあったはずで、筆者の構成力には脱帽するばかりです。
おそらく描かれるであろう「冬期限定」で、この流れにどう決着をつけるのか、期待の高まるところと言えましょう。

「夏期限定」の感想を書いた時に、あの本の最後は読むのがつらかったと書きましたが、「秋期限定」のラストは、そのつらさを吹き飛ばすような、読み応えのあるものでした。
小佐内さんの狼たる所以を示すような、淡々とした、けれども冷酷な響きを持った語り。そして、冒頭に書いたミステリーの醍醐味とも言える解決編。
そして、何よりも、小鳩くんと小佐内さんがお互いにとってお互いが必要な存在であることを認め合ったこと。自らと自らの理解者を見つけた安心感と喜びが、彼らの中にあったに違いありません。
もちろん、彼ら自身も語っている通り、彼らの心の通じ合わせ方は、いわゆる「恋愛感情」とは必ずしも一致しないかもしれません。彼らの自意識が、ある意味ゆがんだ形を持っているというのも、嘘ではないでしょう。しかし、その己を抱えて生きていくしかないのだというある種の悟り、もしくは「開き直り」が、人が生きていくためには必要なのではないかと、僕は思います。
「春期限定」の感想にも書いた通り、彼らのそういった姿に、僕は「青春小説の醍醐味」を感じます。

それにしても、ラストの小佐内さんのセリフ。小鳩くんはどう受け止めたんでしょうね。
1.あの野郎、そんな不埒なマネをしやがったのか。
2.僕も同じ目に合うのは、やだなぁ。
3.「勝手に」じゃなきゃ構わないんだよね。
4.しばらくはおとなしくしていよう。
僕なら、「4」ですけど……(笑)

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「夏期限定トロピカルパフェ事件」

4488451020夏期限定トロピカルパフェ事件 (創元推理文庫)
米澤 穂信
東京創元社 2006-04-11

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前作で「恋愛関係にも依存関係にもないが互恵関係にある」と記述された小佐内さんと小鳩くんの関係に、今作では微妙な変化が訪れます。
それは、物語世界の中での変化でもあるし、話者が作為的に読者にそう読ませようと仕掛けているという意味でもあります。
「前作では、『恋愛関係にはない』なんて書いていたけど、やっぱり…」と思わせることで、この作品に一つの萌え要素を加えようという意図は明白で、そして、悔しいことにその意図は、僕のような読者には、非常に…その…効果的なのです(笑)

ただ、そんなラブコメチックな展開には、当然裏があるわけで、その落差たるやすさまじいものがあります。僕は、そんなわけで、この本を読み終えるのが、結構つらかったです。もちろん、物語がつまらなくてという意味ではなく、逆に、彼らの気持ちが分かりすぎるほど分かってしまうので……

第一に、「春期」では、自転車といちごタルトを失った悲しみを糧にするがごとく、復讐への喜びをたぎらせていった小佐内さんなのに、今回の計画は、決して高揚感とともに計画・実行されたものではないでしょう。なので、彼女の姿が痛々しかったです。
第二に、先程述べた作品世界の中での二人の関係、特に小佐内さんの小鳩くんへの気持ちが、微妙に変化し、しかもまずいことに、それが自己否定と罪悪感につながっちゃう。小鳩くんだって、一人称の語りでは虚勢はってるけど、結構つらい思いをしてそうです。

僕は、すでに「秋期」の存在を知っているからまだ救いがあったけど(内容を知っていたわけじゃないけど、続きがあるということはこれでおしまいじゃないはずなので…)、リアルタイムで読んでた人は、さぞつらかったろうなと思います。
そんなわけで、「夏期」を読み終えた僕は、翌日には「秋期」を買いに走ったのでありました。

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「春期限定いちごタルト事件」

4488451012春期限定いちごタルト事件 (創元推理文庫)
米澤 穂信
東京創元社 2004-12-18

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最近、米澤穂信さんの本をたて続けに読んでいます。
今月は読書欲が旺盛で、新しい作家を発掘したくて、mixiのコミュの「オススメ青春小説!!」のトピックスを参照させていただきました。
で、白羽の矢を立てたのは、米澤穂信さん。「小市民シリーズ」は、本屋さんで平積みになっていることも多く、その愛らしい表紙で印象に残っていたので、これを機に読んでみようと思い立ったわけです。

「さよなら妖精」「氷菓」「愚者のエンドロール」と読み進めていったのですが、正直、面白くないわけじゃないんだけど、もう一つという感じでした(何がもう一つかということを書き出すと長くなるので、その辺りは機会があれば、また後日ということで)。

しかし、「春期限定いちごタルト事件」に至って、お気に入り度数が一気に上がりました。
何が良いって、まず、文章のテンポが良いです。語り手の小鳩くんの感情が、手に取るようにわかる感じというのでしょうか。
で、そういう文章になるためには、小鳩くんの感情の起伏がないといけないわけですが、そこも面白いのです。
彼と、そのコンピである小佐内さんは、「小市民」を目指しているのですが、「目指す」というからには実は「小市民」ではないんですね。小鳩くんは、目の前にあるあらゆる事象を推理し、読み解くことに執着しています。彼は「自分はすべてを見通せる」という思い上がりを矯正しようと思い、同士である小佐内さんと互恵関係を結んでいるわけです。
その彼が、自分の好奇心や尊大さを抑えようとしても抑えられない様子、それを嘆いたり誤魔化したりする様子が、可愛らしいんですね。

小鳩くんが「小市民」を目指すゆえんは、一番最初に、しかもかなりコメディタッチで描かれるのですが、小佐内さんの方は、彼女が何をその内に飼っているのか、なかなか明かされません。
彼女がおいしそうに甘い物を食べるシーンというのは、それだけで魅力的ですし、読んでる側も甘い物を食べたくなるような破壊力があります。
しかし、その微笑ましさに隠された彼女の本性が解き放たれていく後半が、また見事です。そして、最初は自分が戒めをやぶる側だった小鳩くんが、解き放たれていく小佐内さんに翻弄される様が、また可愛らしいんですよね。

彼ら二人は、自分たちの本性を覆い隠そうとしている。でも、そこから逃れることができない。その人の持つ属性がなんであれ、自分が自分であることに苦しみ、そこから逃れようとし、そして自分を見いだしていくのが「青春」の一過程であると僕は思っています。
そういう意味では、このシリーズは、僕の考える「青春小説」そのものです。
実は、もう「夏」「秋」と読み終えていますので、彼らがそのどうなっていくのかを、僕は既に知ってしまっているのですが、そのスタートを飾るのにふさわしい第一作です。

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「おと・な・り」

109シネマズ・MM横浜にて鑑賞。
「虹の女神」の熊澤尚人監督の作品ということで、期待しておりました。
「ニライカナイの手紙」でも、主人公はカメラマンだったし、今回も主人公の一人はカメラマン。そういう設定がお好きですね。

タイトルが示す通り、「生活音」を通して繋がっているおとなりさん同士の話です。
ですから映画でも音の質には気を遣っているようで、そういう意味でも映画館で見て正解でした。
もちろん、心地良い音ばかりではなくて、時には不快な音もあって、腹を立てたりすることもあるわけですが、それでも「人の存在を感じ取る」手段にはなっているわけです。
人を感じる意識がもっと鈍ければ、生活音なんて気にしないか迷惑に感じるだけだし、もっと交流のある場であれば、音だけでつながっているなんてないわけですから、いかにも現代の都会的な状況なのかなとも思います。
そういえば、「毎日通っているコンビニ」なんてのも、割と重要な役目で登場してますし。

そういった関係が、物語のラストの方で、大きく変わってきます。音以外のつながりが、発見されていくのです。この「発見」というところがミソで、前から自分の中にあったものだからこそ、共通点がみつかった時に、「自分が認められた嬉しさ」を感じることになるのでしょうね。
主人公の二人が、それに気づいた所でストーリーはおしまい。「出会い」までしか描かれていないのですから、恋愛映画とはちょっと違うのですが、それでも幸せな気分で見終われる映画ではないかと思います。実は、エンドロールで、二人の未来を暗示する場面が流れるのですが、音にこだわった映画らしく、流れるのは音(セリフもふくめて)のみです。そんなエンディングも素敵でした。

ただ、この映画は恋愛的要素だけで成り立っているわけではなくて、悩めるアラサー(around thirty)の物語でもあるわけです。三十歳独身で仕事も順調ではあるんだろうけど「自分らしい仕事」ができているかどうかわからない。結婚とか子どもを持つということに憧れもあるけれど、自分は、となると考えてしまう。親との関係もしっくりいかない。そういう、色んな要素が、しかもさりげなく配置されています。だから、先ほど「幸せな気分で見終われる」と書きましたが、見ている間じゅう、ずっと幸せな気分でいられるかというと、そうでもないと思います。結構、ドキッとさせられるどんでん返しもありますし。

最後に、写真関係のことをいくつか。
先ほど挙げた「音以外のつながり」の中に、ふるさとの風景が入っています。聡が高校時代に写真雑誌に送って入選したコスモス畑の写真。七緒がいきつけの喫茶店で見上げる狭山湖の写真。これが、二人の接点になっていくわけです。僕も、写真を撮る人間ですが、こういう写真のあり方って素敵だと思います。芸術の世界では「オリジナリティ」が求められる部分がありますが、僕はそういうのって苦手なんですよね。みんながどこかで感じていることを、きちんとすくい上げて形にしたい、それが僕が写真や、物語に求めていることなのかな、と思いました。
それから、聡はカナダに行って風景写真を撮ることを夢見ているのですが、そのカナダの写真を提供したのが、写真家の吉村和敏さんだそうです。僕は、吉村さんのブログの愛読者ですし、展覧会も拝見させていただきました。今、吉村さんは日本の風景写真にも取り組んでいらっしゃるそうなので、僕としては、カナダよりもそちらの方が楽しみなんですが。

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7月の新刊

早々と7月の新刊情報です。
偶然らしいですが、ジョージ・オーウェルの「一九八四年」が新訳で早川書房から出るようです。
僕は、ネットで古本探して買ってしまいましたよ(^^; まぁ、無茶苦茶高かったわけでないですから、よいですけど。


07/08
図書館の神様/瀬尾まいこ
筑摩書房・ちくま文庫/¥525

07/上
一九八四年〔新訳版〕/ジョージ・オーウェル
早川書房・ハヤカワepi文庫/¥966

07/16
おうちがいちばん 4/秋月りす
竹書房/¥680

07/17
絶対可憐チルドレン 17/椎名高志
小学館/¥420

07/17
ごきげんな日々/谷川史子
集英社・集英社文庫コミック版/¥630

07/17
外はいい天気だよ/谷川史子
集英社・集英社文庫コミック版/¥630

07/28
中庭の出来事/恩田陸
新潮社・新潮文庫/¥740

07/28
神の守り人(上)来訪編/上橋莱穂子
新潮社・新潮文庫/¥580

07/28
神の守り人(下)帰還編/上橋菜穂子
新潮社・新潮文庫/¥580

07/28
バルサの食卓/上橋菜穂子
新潮社・新潮文庫/¥460

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読書メーター

「読書メーター」始めました。

写真系のSNSには二つ入っているので、読書系のSNSがないかと思って探してみました。
それに、最近は、感想をまとめるヒマがなくて、読んだはいいけど感想を書いてない本がたくさん。
せめて、どんな本を読んだか記録しておきたいな…ということで。

http://book.akahoshitakuya.com/u/22860

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