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2011年11月

TPPと医療制度

TPP関連の話の第2弾は、医療制度についてです。
以前から関心のあった農業と違ってこちらはにわか勉強の感はぬぐえません。が、僕の目にするTPPがらみの医療制度についての話が、かなり強引な論理展開が多いので、それでも疑問を呈さずにはいられないのです。

農業の法人化がTPP以前から議論されているのと同様に、医療制度においても根はTPP以前からあるようで、小泉内閣の規制緩和政策の中でも導入が議論されていた内容だそうです。とすれば、こちらも農業と同じようにTPPという外圧を利用しして、国内の制度を改革する動きであるという側面もありそうです。

医療制度において、TPP参加で変化するであろう点は、主に二点あるようです。それは、混合診療の解禁と、株式会社の参入の解禁です。

混合診療とは、簡単に言えば、保険診療と自費診療を組み合わせた診療です。現在は、ごく一部を除いて混合診療は禁止されており、保険診療を行う場合にはその範囲内での治療が行われ、自費診療の内容をふくむ場合には保険診療と同じ治療を行う場合でも保険診療扱いにはならないのです。
混合医療が導入されると、費用をかけるかかけないかによって医療の内容を変えることができるようになります。逆に言うと、お金の有無によって受けられる治療に格差が生じることになるわけです。
TPPに反対する人たち(=混合医療解禁反対派)が問題視するのはこの部分で、混合医療が解禁されると、医療に不公平が生じるというわけです。
ただ、僕が思うに、保険がカバーする治療内容の範囲を変更しない限りは、「お金をかけることでより充実した診療を受けることができる」という選択肢が増えるだけで、即座に医療レベルの低下につながるものではないはずです。
混合診療の開始によって「医療レベルが低下する」には「医療保険のカバーする範囲」の規定を変えることが前提なのですが、TPP反対を唱える人の主張には、この部分が省略されていて、混合医療が開始される=医療レベルの低下と即断されているケースがほとんどです。極端な場合は、混合医療の「解禁」と混合医療「だけになる」の区別もつけていないこともあるくらいです。
さらに言うと、TPPの交渉内容が「混合医療の解禁」「医療保険のカバーする範囲」を含んでいるのか、含んでいるとしたらどこまで強制力があるのか、ということにも全く触れられていません。僕が調べた範囲では、「混合医療の解禁」は交渉内容になる可能性があるが、「医療保険のカバーする範囲」については国内に決定権があるようです。
僕が冒頭で「強引な論理展開」と言ったのは、この辺りで、本来あるべき様々な条件を、まるで無いように説明してしまうのは、いくら「わかりやすくするため」という理由があるにしろ、少々乱暴すぎるのではないかと思うのです。

現在、医療の現場では人手不足が深刻化しているそうです。その原因は様々あるでしょうが、理由の一つに病院の財政難があると思います。財政難であるが故に人を増やすことができず、低賃金労働・長時間労働が恒常化しているという話も聞きます。混合診療が始まると、病院が利益を追求するために患者の選別を行う、などという危惧もあるようですが、僕は、医療現場の労働条件を良くし、医療の世界に人材を確保するには、病院の経営がある程度利益があがる構造にしなければならないのではないか、と考えています。

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TPPと農業

最近、TwitterでTPPに関することをいくつか発言してきました。
そろそろ140字では書ききれない部分が出てきたので、改めてブログの記事としてまとめてみたいと思います。

TPPには様々な側面がありますが、論点として主に出ているのは、次の二点かと思います。
・非関税化することで外国の安い農産物が輸入され、日本の農業が衰退する。
・TPPはアメリカのシステムをグローバルスタンダードとして拡散するもので、特に保健医療の制度が損なわれる。

最初に断っておきますと、現在のところ、僕はTPPには賛成です。
なぜ賛成なのかについては、これから説明していきますが、僕がTPPについての色々な意見を読む中で感じたのは、
現状を「良い」と考える人はTPPによる変化を嫌い、現状を「改善すべき」と考える人はTPPによる変化を望んでいる、ということです。
考えてみれば当たり前のことなのですが、何を良いと考え、何を悪いと考えるかによって、生じる現象は同じであっても、評価は変わってきます。
ですから、その辺りもふまえながら、説明をしていきたいと思っています。

まず、農業の現状についてですが、カロリーベースで自給率40%というのはよく言われる数字です。さらに、現在の基幹的農業従事者の平均年齢は65.7歳。65歳以上の占める割合は60.4%です(平成21年度 食料・農業・農村白書)。さらに、販売農家数は、平成2年の297万戸から平成21年の170万戸と減少し、中でも主業農家(農業収入が農外収入より多く、かつ65歳未満の農業従事60日以上の者がいる農家)の数は82万個から35万戸と半減以下になっています。
農業就業者数は1990年から2007年の間に91万人減り、31%の減少率です。2008年度の新規農業就業者は6万人で、60歳以上が46.3%。非農家出身者は11.6%で、ほとんどは自分の家の農地を引き継いでいる人たちです。
この数字を見て、TPPに参加しなければ、日本の農業は存続できると思える人は、あまりいないのではないでしょうか。
このまま何もしなければ、農業の高齢化と労働力不足は、さらに進んでいくことでしょう。

農業人口の減少には、様々な理由があると思われます。
高度経済成長以来第二次産業・第三次産業がもてはやされ、農業は前時代的な産業という意識が芽生えました。このような農業に対する否定的な評価は、「食の重要性」が見なおされてきた現在、多少は改善されてきた感があるとはいえ、積極的に農業をしたいという若い層が出現するほどではないかと思います。
もし、新規に農業を始めたいと思う人がいたとしても、農地や農業機械の購入、農業技術の習得など、様々な「壁」があります。
そういった現状を打破する方法の一つに「農業の法人化」が挙げられます。
政府のTPP対策の一つとして「農地の集約による大規模化」が提唱されていますが、家族経営の農家に、農地を集約するだけの資金が充分にあるとはいえないでしょう。
さらに、法人化することによって、非農家出身者で農業を行いたい人は、自分で農地や農具を購入することなく「企業に就職する」という形で農業を始めることができるようになり、新たな労働力を確保することも可能になるはずです。

さて、これまでのところ、TPPに参加することとは直接関係のない話になっています。これらの改革は、TPPへの参加なしでも可能だからです。
TPPについてのwebの記事をいくつか探して読んでみたのですが、その中に「TPPで開国しなければ、という声を聞くが、日本の農産物の関税は充分に低く、開国しなければならないような保護状態にはない」という主張がありました。
もし、その主張が本当であるならば、日本がTPPに参加したとしても、今以上に安い農作物が流入してくるという事態にはならないはずです。逆に、他の国の関税を引き下げることで、日本の農作物が輸出しやすくなるならば、デメリットが小さく、メリットが大きいことになります。

また、TPPで農業が滅ぶという意見では「安い農産物が入ってくる=安い農産物しか売れなくなる」となるようです。
しかし、本当に「安いものだけが売れ、高いものは売れない」という状況になるのかは、消費者の選択にかかっていると思うのです。
日本の農産物が、外国産の農産物に比べて付加価値が高ければ、値段が高くとも売れる可能性があります。安全性とかおいしさとか新鮮さというような付加価値です。
さらに、日本で生産された農産物を購入することが、日本の農業を守り、雇用を確保し、自然環境保全の役割もになうことになるという意識が消費者にあれば、日本産の農作物が選択される可能性は高いのではないでしょうか。
外国産農作物との競争の中で、付加価値を高め、それを上手にアピールする必要性があることが理解されてくれば、日本の農業も良い方向に向かうと思うのですが、どうでしょう。

農業については、地産地消やグリーンツーリズム、地域防災の観点などからも書きたいことはたくさんあるのですが、それらはTPPとは直接の関係がないので、別項に譲ることとします。

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