スキャン代行業者に対する提訴について
12月20日、スキャン代行業者2社を著作権侵害だとして一部事業の差し止めを求める提訴が東京地方裁判所に提起されました。原告は、浅田次郎氏・大沢在昌氏・永井豪氏・林真理子氏・東野圭吾氏・弘兼憲史氏・武論尊氏。この件がきっかけで、Twitterのタイムライン上でも、電子書籍に関するさまざまな意見が目に入るようになりました。僕自身も、何件かつぶやいているのですが、この件に関しては、ブログの記事という形でまとめておきたいと考え、この文章を書いています。
まず、僕自身の電子書籍の利用状況を簡単に説明しておきます。
今年の9月にソニーの「Reader」という電子書籍端末を購入し、実際に何冊かはこの機器を使用して本を読んでいます。しかし、紙媒体の本と電子書籍を比べると、圧倒的に(きちんと数えてはいませんが、9対1くらいの割合で)紙媒体の本を購入しています。
そもそも、僕が電子書籍の使用にふみきった理由は二つあります。
一つは、自宅の本の置き場がかなり苦しいこと。現状で苦しいのですから、僕があと40年生きるとして(現在45歳)、この倍の本を購入することになったら、とても収納しきれるものではない、という焦燥感があります。実際、興味があって「購入しようかな」と思う本でも、「置き場を考えるとやめよう」と思う本がかなりあります。せっかく購入した本でも、置き場がないために定期的にブックオフに売りにいかなければならない状況です。
もう一つは、電子書籍でしか出版されない本の存在です。個人出版の本ではこの手の本が非常に多いのですが、僕が読みたかったのはこの種の本ではなく、豊島ミホさんらが出版した「文芸あねもね」という本です。
「本の置き場がない」という理由で電子書籍端末を購入したにも関わらす、相変わらず紙の本を買い続けている理由は「電子書籍版が売っていない」ということです。
電子書籍化に反対する方(主に読者層の方で)の意見に、「やっぱり本は紙で読まないと」「装丁も含めての美しさがあるのが本の価値の一つ」というのがあるのですが、僕も全くその通りだと思います。文庫本で読んで気に入った本のハードカバーを買い足したり、好きな漫画の「完全版」が出ればそちらも購入したりもしているのです。
が、その一方で、物理的な許容量には限界がありますから、「もう今ある本だけを愛して、それを再読するだけで生きていく」(ということができるくらいには蔵書があるつもり)という道を選ぶか、「電子書籍を購入して物理的スペースを節約する」という道を選ぶしかないのです。紙の本が好きだから、紙の本だけを購入して生きていくという道は、少なくとも僕には選べないのです。
僕の家は、残念ながら子どもには恵まれなかったので、妻と二人暮らしです。二人とも本好きなので、本を置くために住環境にはかなりぜいたくをしています。それでもその状況なのですから、子どもがいらして、配偶者に本への理解がない場合などは、本を置くことのできるスペースというのは、もっともっと少ないはずです。
漫画喫茶や新古書店が人気なのは、もちろん「安く読める」ということもあるのでしょうが、「本の置き場に困らない」ということもあるのではないでしょうか。
スキャン代行業というのは、そんな僕にとって「利用してみたい」と思わせる魅力があるサービスです。
本の置き場には困っているものの、1冊1冊に手間をかけて処理していく時間がない。スキャンしたとしても、それを適切な設定で適切な美しさで実行する技術がない。誰かがそれをやってくれるなら、そんなにありがたいことはない、という発想です。
今のところそれを実行していないのは「これから電子書籍が発展してくれば、スキャンするよりそっちを買う方が、読みやすい本が手に入るに違いない」という気持ちと「せっかく買った本にメスを入れるのは忍びない」という気持ちがあるからなのです。その意味では、今回の浅田次郎さんのコメントは、よくわかります。でも、そうせざるを得ない状況もあるのだということを理解して欲しいのです。
今回問題になったのが「複製権」に関するものだということは理解しました。実はこれまで、僕はその点を理解していなかったので、スキャン代行業をなぜ批難するのか、よく解っていなかったのです。
でも、自分でスキャンするのが合法で、他人に代行してもらうのが違法という根拠がもう一つ納得できないのも本当です。昔、どこかの図書資料館で(割と貴重な本をあつかう場所だったイメージ)、資料を傷める可能性があるので、コピーを取る場合には図書館の職員にページを申請して作業してもらう、という経験をしたことがあります。理屈としては、それと同じですよね。
もちろん、デジタル化することによって「違法コピーが出回りやすくなる」というデメリットがあることは重々承知です。でも、今回問題になっているのは、その点ではなく、「複製権」に関するもののはず。
その点では、僕は東野圭吾さんの発言に、まったく納得がいきません。この二点を明らかに混同している発言だからです。
「電子書籍に対するニーズがあり、それに対して出版業界が対応できていない」という事実は、認めてもらわなければなりません。
「本をスキャンすること=海賊版の作成が目的」という理解をされてしまうのであれば、少なくとも、僕の感じている葛藤は、まったく出版側には届いていないということになります。
参考にした記事
■ebookuser「東野圭吾さんら作家7名がスキャン代行業者2社を提訴――その意図」
■ebookuser「スキャン代行業者提訴で作家7名はかく語りき」
■琥珀色の戯言「本の尊厳をこんなに傷つけられる世の中になるなんて」
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