カテゴリー「書籍・雑誌」の記事

「“文学少女”見習いの、初戀。」

4757748299“文学少女”見習いの、初戀。 (ファミ通文庫)
竹岡 美穂
エンターブレイン 2009-04-30

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文学少女シリーズの外伝です。
心葉くんは三年生に進級し、文芸部にも新入生が入ってきます。
遠子先輩に支えられてきた心葉が、今度は新入生の菜乃を支えていきます。そんな心葉がたくましく見え、かなりカッコイイです。
しかも、後輩に向かって文学作品の蘊蓄を話したり、想像力で事件に立ち向かったりする姿には、単に彼が成長したというだけではなく、遠子先輩の影響をひしひしと感じます。
「未来への全身」と「過去への追憶」の両方を描いた、見事な続編となっていると思います。

ちなみに、モチーフは近松門左衛門の「曽根崎心中」。
心中物ですから、相変わらず重い話なんですが、死んでしまおうとする相手を勇気づけるシーンが、とても美しいです。

この外伝がどこまで続くかわかりませんが、あとしばらくは「新しい物語」が読めるのだと思うと、嬉しいですね。

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「“文学少女”と恋する挿話集 1」

4757745788“文学少女”と恋する挿話集 1 (ファミ通文庫)
竹岡 美穂
エンターブレイン 2008-12-26

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本編完結後に出版された短編集です。
本編はかなりシビアが話が多いのですが、こちらはコメディ風味なので、気軽に味わえます。
遠子先輩も心葉くんも、シリアスタッチでもコメディタッチでも、全く違和感なくこなせるところが、このシリーズの幅の広さですね。
しかも、それぞれの短編に、文学作品がきちんと登場するので、遠子先輩の文学の蘊蓄を楽しみにしている人には、一冊でたくさんの料理を味わうことができるアラカルトメニューといったところでしょうか。
本編の方でちらっと出てきたエピソードを細かくフォローしたり、麻貴先輩や流人くんの視点で描かれた遠子先輩や心葉くんが読めたり、本編をより楽しむことができる作品集になっていると思います。
個人的には、美羽と芥川くんの話が好き。

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「“文学少女”と神に臨む作家」

4757741731“文学少女”と神に臨む作家 上 (ファミ通文庫)
竹岡 美穂
エンターブレイン 2008-04-28

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4757743718“文学少女” と神に臨む作家 下 (ファミ通文庫)
竹岡 美穂
エンターブレイン 2008-08-30

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文学少女シリーズ、本編の最終話になる、7巻目・8巻目です。
これまで謎に包まれてきた遠子先輩の家庭の話がメインになります。
どうして遠子先輩が流人くんの家で暮らしているのか、叶子おばさんとの関係はどうなっているのか、なぜ流人くんがあれほどまでに心葉に小説を書かせようとするのかといったことが、次第に明らかになっていきます。
メインテーマは、遠子先輩の両親と、流人くんの両親との間にある愛憎劇。

話の組み立てとしては面白いと思うんだけれど、作家とそれを育てる人の話にしすぎたことに、ちょっと違和感を感じました。この話のもう一つのテーマとして、心葉が小説を書くのか書かないのかという話があって、それと関連づけるという意味では必要なんですが、どうも作家像をせまく語りすぎているような気がしてなりません。
それと、遠子先輩と心葉の関係だって、最初に「青空に似ている」ありき、二作目を書かせたいという目的ありきではなくても良かったはず。一緒に過ごした二年間に、もっと重みを持たせる意味づけにして欲しかったなぁ。最初はちょっと興味があって会ってみたかっただけだったのに、彼の話を食べているうちに、二作目が書けるのではないか、もしくは、彼の中で書きたいという気持ちが高まっているんじゃないかということを感じてきて…という話だったら、もっと良かったと、個人的には思っています。
大体、叶子さんを論破した時点で、「狭き門」は一人でくぐるものじゃないって話になるのなら、最後に二人が別れなければならない理由は、ないはず。心葉は、最初は叶子さんに圧倒されていたのが、最後は彼女を説得できるまでになるのだから、この物語の中だけでも、ずいぶん成長したはずです。
話の流れとして、その方が感動的になるとはわかっていますが、思わず、「あんたはメーテルか!」と言いたくなりました。

とはいえ、シリーズを通してあちこちにばらまいた伏線を見事に回収し、シリーズ最終話としての役割を見事に果たしていることは否めません。
「月花を孕く水妖」の感想で書いた「地雷」(レモンパイのことですよ)の見事な肩すかしっぷりには笑わせていただきましたし、「白いマフラーとサケをくわえたクマ」は単なる冗談かと思っていたら、ラストで重要なアイテムと化してましたしね。

さて、このシリーズを通して心葉の胸の内を去来するのは、「書くべきか」「書かざるべきか」という葛藤です。
これまで、このブログではあまり触れてこなかったと思いますが、その昔、僕も「書く側の一人」だったことがあります。といっても、大した活動をしていたわけではなくて、大学時代に同人雑誌を作っていただけですが。同人誌っていうと、今の時代、マンガ界の言葉になってしまった感がありますが、そういうのではなく、詩とか小説とかを語学クラスの友人たちと持ち寄って、コピー誌を作っていたのです。
僕は、読み手としての自分は、なかなかの水準にあると自負しているのですが、その目で自分の書いたものを見ると、いかに自分が書き手に向いていないかわかってしまうのですね。悲しいことに。
写真や書評はブログで発表できるのに、自分の書いた小説はほとんど封印しているのは、そういう訳です。まぁ、写真も、見る人が見れば「よくこんなの載せられるなぁ」というレベルかもしれませんが、いいんです、自分で粗が見えなければ。
そんな僕でも、この話を読んでいる時には、「もう一度書いてみようか」という気持ちにさせられることがしばしばありました。写真につける短歌を考えたりということはありましたが、「小説」って形で文章を書いたことは、15年くらいないんですけどね…

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「“文学少女”と月花を孕く水妖」

4757739184“文学少女”と月花を孕く水妖 (ファミ通文庫)
竹岡 美穂
エンターブレイン 2007-12-25

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シリーズ6冊目は「特別編」と銘打たれてはいるものの、位置づけとしては7巻に向けてのエピローグという感じですね。
そもそも、ゴシック体のいつものモノローグが、心葉が過去を回想する形で書かれていることが、すべてを象徴しているかのようです。
最初に読んだ時にはあまり意識しなかったのですが、エピローグ部のゴシック体部分に、ななせ派の人にとっては「これは!」と思わせる内容が書かれているんですよね。再読して気づいたのですが、7巻目の最初の部分に出てくるあるキーワードが、ここにさりげなくはさまれていて、「こんな所に地雷(しかもこんな強力なの)を埋めておくなんて!」と思わずニヤリとしてしまいます。
このシリーズの構成力と伏線回収を巧みさは、本当にすばらしくて、再読すると、最初には見えなかったものがたくさん見えてきます。一度全編を書き上げてから、順番に出版していったのではないかと思えるほど。

さて、今回のモチーフは泉鏡花です。前に金沢に行った時に、妻につきあって泉鏡花記念館に行ったのですが、その時に、もっと真面目に見ておけばよかったと反省しています。
泉鏡花がモチーフだけあって、今回はホラー色が強くなっています。遠子先輩が大の苦手なヤツですね。
ホラー的な物語の謎がどう解明されていくのかを楽しむのも、この巻の楽しみ方の一つではありますが、この巻は、それ以上に「遠子先輩の可愛らしさを味わう巻」といっても過言ではありません。遠子派の人たちにとってはたまらない一冊でしょう。
ただ、ここで遠子先輩が無意味に可愛いだけではなくて、ちゃんと次の巻への伏線になっているところが恐ろしいところです。「夜叉ヶ池」の百合と晃の物語が、80年前のゆりと秋良の物語に重なり、そして、そのそれぞれが遠子と心葉の物語に繋がっていく構造になっています。特に、エピローグで遠子がゆりの気持ちを語る場面は、後から読み返してみると、本当に切なくなります。

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「“文学少女”と慟哭の巡礼者」

4757736851“文学少女”と慟哭の巡礼者 (ファミ通文庫)
竹岡 美穂
エンターブレイン 2007-08-30

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文学少女シリーズの5冊目。
いよいよ、心葉がずっと心に残していた初恋の少女、朝倉美羽が登場します。
ゴシック体のモノローグが本編と並行して挿入されていく形は、いつもと同じなのですが、今回はそれが読者のミスリードを誘ったり、謎をふくらませたりする方向に働くのではなく、美羽の本心を早い時点から垣間見させる方向に働いていたのではないかと思います。
芥川くんが心葉の部屋を訪れた時の心葉の心の揺れなどは、どちらを信じてよいかという迷いではなく、本当は美羽が嘘をついていることはわかっているのだけれども、それを信じたくないという怖さの方があったのではないかと思いますし、僕は、あの場面を読んでいて、美羽って何て恐ろしいヤツなんだろうかと思っていました。

しかし、美羽が心葉に向ける憎しみは、実は美羽がそれほどに心葉を求めていたことの裏返しであることが、徐々に分かってきます。
そして、前作の感想にも書いたように、琴吹さんとの諍いの中で、彼女はずっと心の奥底にしまわれていた、彼女の孤独を、心葉を求める素直な気持ちを、吐露することになるのです。
「繋がれた愚者」での芥川くんにも深い共感を覚えた僕ですが、この場面での美羽の気持ちにも、心打たれるものがありました。

美しい言葉を求め、他人に優しくありたいと願いながらも、それを叶えることができず、そのすべさえも見えない美羽を、哀しみから救ってくれたのは、やはり遠子先輩の言葉でした。
宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」をモチーフに、プラネタリウムの満点の星のもとに遠子先輩が語る場面は、幻想的な美しさに満ちています。満天の星をあまたの物語にたとえ、本を手にとることで癒される渇きのあることを、教えてくれるのです。テーマとしては「繋がれた愚者」と重なる部分があるのですが、場面の美しさという点では、こちらが上回っていますね。

それに、琴吹さんと美羽の戦いは、色んな意味で面白いです。伏線は、かなり前から周到に準備されているし、いったん決着がついたかに見える状況から、更に逆転が待っていますし、この後の巻の二人の関係というのも、いい感じなのです。

さて、今回のモチーフとなっている、宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」。いまさら説明するまでもない、超メジャー作品ですが、正直、僕はあまり好きではありません。宮沢賢治の作品では、「貝の火」が一番好きなんですよね。僕の中では、「銀河鉄道」と言えば、圧倒的に「999」です。
今回、感想を書くにあたって、「銀河鉄道の夜」を再読してみたのですが、やっぱり手応えがないんですよね。遠子先輩の話の中の「銀河鉄道の夜」の方が、圧倒的に魅力的だったりします。
なぜかということを考えてみるに、「銀河鉄道の夜」は、僕にとっては幻想的すぎるんですね。絵本にすると、色彩的に美しくなるのかもしれませんが…。「銀河鉄道の夜」が内面世界への旅だとすると、「999」は未知の世界への冒険です。劇場版では「機械の体を手に入れる」という目的が明確になりすぎていますが、TVアニメや原作の漫画では、さまざまな星をめぐることで、鉄郎が、何が正しいことなのか、自分はどう生きたいのかを学ぶ話になっていると思うのです。ハーロックがかっこいいので、劇場版も大好きですが(笑)

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「“文学少女”と穢名の天使」

4757735065“文学少女”と穢名の天使 (ファミ通文庫)
竹岡 美穂
エンターブレイン 2007-04-28

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「文学少女」シリーズは、語られるテーマのシリアスさではライトノベルらしくない部分がありますが、その一方で、いかにもラノベらしい部分もあります。女性キャラ陣の「萌え度」が高いのも、その一つです。
2chのスレをのぞいてみると、「遠子派」「美羽派」「ななせ派」「千愛派」などが乱立し、お互いに覇を競い合っているようです。

こんなことを突然書き始めたのは、シリーズ4作目の「穢れ名の天使」は、これまで脇役でしかなかったツンデレキャラの琴吹ななせさんが、井上心葉くんのハートをわしづかみにするお話だからです。
なぜ美羽が「コノハにはわからない」という言葉を残して屋上から飛び降りなければならなかったかを、彼は直視できずにいます。
親友である夕歌を失い、彼と同じ立場に立ったななせが、あくまでも夕歌の真実を知ろうとつらい現実と戦う姿に、彼は勇気づけられるのです。そして、人と関わることにあれほど消極的だった彼が、ななせを守っていきたいという気持ちにめざめる様は、なかなかに素敵でした。

このシリーズの物語の構造で言うと、この巻は、次の巻でいよいよ心葉と美羽が再会する、その序章になっています。口の悪い「遠子派」の人は、ななせは本来脇役だったのが、人気が出たので、急遽心葉の彼女役まで出世したみたいなことを書いていましたが、僕はそうは思いません。
遠子さんは、心葉くんを見守ることはしていても、彼を美羽から奪い取ろうとは思ってくれないでしょう。次の巻のネタバレになってしまいますが、心葉が美羽の呪縛から逃れられたのは、ななせの存在があってからこそで、だからこそ、この一巻が「慟哭の巡礼者」の前に置かれているのだと思っています。

それから、心葉くんが小説の書き手であるからなのか、筆者自身の思いなのかはわかりませんが、このシリーズでは「読むこと」の話だけではなく、「書くこと」の話も出てきます。今回の話では、「歌うこと」も同じ位置づけで登場していました。何かを行うということは、人を傷つけることもある。自分が傷つくこともある。それを知って、立ち止まってしまいたくなることも……。しかし、その一方で、それによって幸せを感じてくれる人もいる。だから、人は一歩を前に踏み出すことができるんですね。
ありきたりな話かもしれませんが、僕はありきたりな話は嫌いではありません。ちょっと言葉を変えれば「普遍的」ということですから。ただし、それが心に染みるような形で語られていればですけれど…。

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「“文学少女”と繋がれた愚者」

4757730845“文学少女”と繋がれた愚者 (ファミ通文庫)
竹岡 美穂
エンターブレイン 2006-12-25

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文学少女シリーズの3冊目になります。

このシリーズ、これまでの2作も嫌いではないですが、3作目のこの巻を読んで、一気に好感度が上昇し、「お気に入りのシリーズ」の位置を占めることになりました。

文学作品と小説の中の人物関係をリンクさせ、本歌取りのような形で作品世界に重みを出すと共に、現代的な設定に話を置き換えることによって、古典的な作品を解釈しやすくし、その作品を手にとってみたくなる、あるいは読み返したくなる気持ちにさせるという点は、これまでと同じです。

ただ、ここまでの2冊は、メインキャラの2人(心葉と遠子先輩ではなく、千愛と蛍のことです)にうまく感情移入ができなかったんですよね。

千愛に関していうならば、「道化」の部分はわからなくはありません。作中でも、誰も本音をさらけだして生きているわけではなく、どこかしら演技して生きている部分があるというような話があったと思います。
ただ、「感情がない」という部分に関しては、どうかなと思います。現実にそんなことがあるかどうかはともかく(自分がありえないと思ったとしても想像して共感するのが読むという行為のはずなので)、もし本当に何も感じる気持ちがないのだとしたら、それを「恥ずかしい」と思う気持ちもないんじゃないか、心葉の訴えだって効果がないんじゃないかと思ってしまうのです。「人とは感じる基準が違う」とか「どこか感情的になりきれない自分がいる」とかいう話ならば、まだ理解できるのですが…。
太宰が「人間失格」で描いた「恥の多い人生」というのも、この作品で出てきた「恥の多い人生」とは、ちょっと違う気がしています。その意味で、「道化」「恥の多い人生」というキーワードだけで太宰とシンクロさせようというのは、ちょっと無理があるのではないかなぁという感じです。

蛍に関しては、蒼に対する憎しみと愛情の板挟みになっている点までは、理解できるんです。が、そこに加わるもう一つの要素(ネタばれ防止のために自主規制)を、どう位置付けるかがわからないんです。ただ、その要素は、話の展開上必要ではあるんで、無くしてしまうのは、難しいでしょうね。
そういう意味では、話の構造をつくるために、感情面の説得力が、少なくとも、僕の中では落ちてしまったなぁというわけなのです。

それに対して、「繋がれた愚者」では、誠実であろうとしても他人を傷つけてしまい、どう生きていけばよいのか迷っている芥川くんの気持ちが、きちんと伝わってきたように思います。
前半で、彼が母親に書いた手紙の中に「切りさきたい」という気持ちを書きすぎているのは、誰が本を切ったのかを読者に知られないようにするための方策だと思うんですが、そこがちょっとやり過ぎたなと思う所はあったのですが、後半の展開がすごく良かったです。
今回、題材となっているのは、武者小路実篤の「友情」です。学園祭で、文芸部の認知度を高めるために、遠子先輩が「友情」を劇でやろうということになるわけです。その「友情」の台詞が、芥川くんや心葉の心情に重なってくる部分があり、そのために彼らは劇を上演することに躊躇することにもなります。
これまでの2冊と違い、この巻では「友情」の引用がかなりたくさん行われます。話の構造が、テーマが似ているというだけではなく、文章に込められた感情までが、重なってくるのです。しかも、同じことに苦しんでいる自分の口から、それを台詞として言わなければいけないという状況まである。
そういう意味で、この巻では、登場人物(芥川くんや心葉)の気持ちと、題材となった作品(友情)のシンクロ度が非常に高く、双方の内容を、十分に描ききったという感があります。

そして、劇のラストで遠子先輩が力説する、芥川くんの迷いをはらすための言葉。そして、心葉と芥川くんが握手をかわすエンディング。僕の大好きな中島みゆきさんの「時代」や「with」に通じるものがあるテーマです。武者小路実篤の本は、ほとんど読んだことがないのですが、これを機に読んでみようという気になりました。どうせ、家のどこかにはあるでしょうしね(笑)

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「“文学少女”と飢え渇く幽霊」

4757729154”文学少女”と飢え渇く幽霊 (ファミ通文庫)
竹岡 美穂
エンターブレイン 2006-08-30

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文学少女シリーズの第2弾です。
この巻で背景となる作品は「嵐が丘」です。
僕は、「嵐が丘」は読んだことがなくて、ただ「ガラスの仮面」で知っているだけなんですよね。

「死にたがりの道化」の感想でも書いたように、僕はこの巻の登場人物については、あまり深い共感は持てなかったです。特にラスト付近。
「嵐が丘」を絡めたストーリーの構造にこだわり過ぎて、そこに至る人物の心情の方は、後付けで付加されたもののように感じてしまったのは、勘繰り過ぎでしょうか。

それでも、幾重にも張りめぐらされた謎が、少しずつ明らかになっていくストーリーの展開には惹かれるものがありますし、軽いコメディタッチにも重い文芸調にも対応できる作者の文章のうまさにも、うならされるところがあり、面白く読める小説ではあったと思います。

それと、これは読み返した時に気づいたのですが、前の巻では「匂わす」くらいにしか登場しなかった美羽に対する心葉くんの気持ちが、少しずつではありますが、描かれるようになってきています。
彼の喪失感と無力感には、共感できる面がありますし、それに対する遠子先輩の態度(独歩の『武蔵野』を差し出す辺り)には、なかなかに微笑ましいものがあります。

僕は、もうシリーズの既刊本を読破しているので、「“文学少女”見習いの初恋。」での堂々とした心葉くんの態度を見ているわけで、その後でこの頃の心葉くんの様子を見ると、「この彼が、よくぞ立派になったものだ」という感慨を禁じ得ません。

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「“文学少女”と死にたがりの道化」

4757728069“文学少女”と死にたがりの道化 (ファミ通文庫)
竹岡 美穂
エンターブレイン 2006-04-28

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「文学少女」という言葉の響きと、可愛らしい絵に惹かれて購入しました。
もっとも、タイトルがタイトルなので、単に可愛らしいだけの話ではないだろうとは思っていたのですが、予想以上に暗い話でした。

このシリーズでは、ある文学作品と物語をからめて描くのが恒例なのですが、この巻では、太宰治の「人間失格」がとりあげられています。
僕自身の読書歴で言うと、太宰治の作品は、大学時代にかなり読んだのですが、あまり傾倒した覚えがありません。印象に残っているのは「駆込み訴え」ぐらいでしょうか。
この巻で描かれているのは、「悲しい」「嬉しい」という感情を人並みに持つことのできない人物の苦しみなのですが、僕の読んだ限りにおいては、太宰が「人間失格」の中で描いた「自己否定」とは、ちょっと種類が違うのではないかと感じました。
ただ、どちらにしても、僕が感じる「自己への不安」とは異質なもので、正直、共感度が高かったとは言い難いです。その点については、エヴァンゲリオンの碇シンジくんの方が、よほど共感できる部分があると言えましょう(笑)

じゃあ、僕がこの物語を読んで、全く惹かれる所がなかったかというと、そんなことはありません。

本編の中に、書き手のわからない文章の断片が挿入されていくという手法は、このシリーズの定番なのですが、この巻では、それを書いたのが誰なのかということが最後の方まで明かされず、その謎を解き明かしていくというミステリー的な要素がふくまれています。そして、いったん謎が明かされたかのように見えた後のどんでん返しも、かなり見事です。

それに、主人公たる井上心葉くんの抱える「闇」が、伏線としてあちこちに顔を出し、それが果たしてどうなっていくのか、つい先のシリーズを読む気にさせられてしまうのです。

それにも増して、「文学について語る」という行為に対する共感には、抗いがたいものがあります。
ヒロインたる天野遠子先輩は、文字の書かれた紙を食事として食べてしまう特異体質の持ち主なのですが、彼女が食べ物の味に例えながら語る物語の世界は、とても甘美に聞こえ、自分もその作品を読んでみたいという欲求に駆られます。
西日のさす文芸部の部室で、うず高く積まれた本に囲まれて、お気に入りの本をひたすら読むという、もう自分には体験できないであろう幸せな場面を読むだけで、この物語を嫌いになることなど、できるはずがありません(笑)

僕は、すでにこのシリーズの既刊本を読破しているのですが、「これは当たりだ」と確信したのは3巻目以降です。1巻目では、まだ「手応えがあるかな…」くらいの感触でした。
なので、この巻だけを読んで、今ひとつという感想を持った方は、だまされたと思って3巻目までは読んでみて下さいませ。

この本、今年の「角川文庫の100冊」に入っているので、あちこちの本屋で平積みになっているのを見かけます。ただ、その他の巻は結構品薄で、特に2巻目は、アマゾンでも品切れ状態。
太宰治は、生誕100年で盛り上がっているみたいですし、その余波で、この本を手に取ってくれる人が増えるといいなと思ってます。

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「阪急電車」

4344014502阪急電車
幻冬舎 2008-01

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阪急電車・今津線を舞台にした連作短編集です。
僕は、電車も連作短編という形も好きなので、とても好みに合う本なのです。
単に今津線が出てくるというだけでなく、前半が下り電車、後半が上り電車を舞台にし、一駅ごとの章立てになっています。そして、後半が前半の後日談となっている辺り、実に凝った構成です。

図書館でいつも一緒になる女性を気にかける男の子、軍オタで年齢=彼女いない歴の男の子、ワラビの採集に執着する女の子など、有川さんらしいキャラが満載です。

ただ、ちょっと気になるのは、電車の中ってあんなに会話が多いかなぁということ。
確かに電車はいろいろな人が集まる出会いの場で、人生の縮図みたいな所がありますけれど、「見る」「聞く」が基本で、そこから「話す」にいたるには、もう少し時間が必要じゃないかと思うのです。
関西ではそういう雰囲気が普通なのかなぁ…と思う所もあるので、「非現実的」とまでは言いませんが、個人的な感覚とはズレてしまっているので、ちょっと残念です。

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